𠮷田樹賞 ロゴ小説作法ミニ講座

―― 書籍小説の基本と、WEB掲載時の読みやすさ ――

本ページは、応募作品をより読みやすく整えるための参考資料です。

形式上の差異のみをもって選考結果を左右するものではありません。

ただし、作品の完成度を確認する一要素として、基本的な文章作法を参照する場合があります。

ページ構成

創作四コマ

基本作法のうち、特につまずきやすい四つのポイントを、案内役のキャラクターが四コマ形式で解説します。

第1話 一字下げの話を説明する四コマ漫画。
第1話 一字下げの話
第2話 会話文末の句点を説明する四コマ漫画。
第2話 会話文末の句点
第3話 三点リーダーとダッシュを説明する四コマ漫画。
第3話 三点リーダーとダッシュ
第4話 WEB小説の空行問題を説明する四コマ漫画。
第4話 WEB小説の空行問題

1. まず押さえる基本作法

地の文の段落行頭は、原則として一字下げます。会話文は「」で始まるため、行頭を下げません。まずは、地の文と会話文が混ざった短い例で見ると分かりやすくなります。

OK例  雨はまだ降っていた。だが息子は旅支度を整えて靴を履く。 「もう行くのか」  息子は頷く。

反対に、地の文も会話文もすべて左端にそろえてしまうと、段落の切れ目が分かりにくくなります。

避けたい例 雨はまだ降っていた。だが息子は旅支度を整えて靴を履く。 「もう行くのか」 息子は頷く。

地の文は一字下げ、会話文は下げない。この二つをそろえるだけでも、文章の見た目と読みやすさは大きく整います。

2. 会話文と記号のルール

句読点

句読点は基本的に「、」「。」を使います。「,」「.」は、特別な意図がない限り避けるのが無難です。

感嘆符・疑問符

感嘆符・疑問符のあとに文が続く場合は、一字空けます。直後で文が終わる場合は、空けなくて構いません。

「本当に? そんなことがあるのか」 「待って! まだ話は終わってない」 「本当に?」 「待って!」

三点リーダーとダッシュ

三点リーダーは「…」を使い、「・・・」や「...」は避けます。三点リーダーとダッシュは、偶数個で使うのが基本です。

「……そうか」 「そんなはずは——」

会話内の引用

会話の中でさらに引用する場合は、『』を使います。

「先生は『待っていろ』って言ったんだ」

3. WEB掲載で許容される調整

WEB掲載では、スマホで読まれることを意識して、余白や段落の長さを調整して構いません。会話文の前後に空行を入れることも、読みやすさのための調整として許容できます。

 美咲は鞄を抱え直した。 「もう決めたことだから」  その声は震えていなかった。

ただし、一文ごとに必ず空行を入れると、かなりWEB小説・SNS文体寄りになります。空行は、場面転換、時間経過、会話の切れ目などでほどよく使うのが自然です。

また、漢字を少しひらがなに開くことで、スマホ上でも読みやすくなる場合があります。

開きすぎると文章が幼く見える場合もあるため、作品の雰囲気に合わせて調整してください。

4. 表記ゆれ・視点・時制

作品内で同じ語の表記が揺れると、読み手の集中が削がれます。特に、ひらがなと漢字の揺れは注意が必要です。

数字表記も統一します。縦書き・書籍寄りなら漢数字が自然ですが、現代的な数値、型番、金額、日付などは算用数字でも問題ありません。

三人/二階/十年前/午後五時 2026年/3LDK/5万円/A-17地区

一つの場面では、基本的に視点人物を固定します。同じ場面で複数人の内面を頻繁に行き来すると、視点がぶれやすくなります。時制も、過去形を基本にするなら意図なく現在形を混ぜすぎないよう注意します。

5. 避けたほうがよい表記

SNS的な表記は、地の文や通常会話では避けるのが無難です。ただし、作中のチャット画面やSNS投稿として出す場合は、演出として使って構いません。

「そうなんだ。。。」 「え、、、待って」 「まじで???」 「・・・そうか」 「それは—」 「行くのか。」

感嘆符・疑問符、擬音だけの行、一語だけの段落などは演出として有効ですが、多用すると漫画的・演出過多に見える場合があります。作品ジャンルや文体に合わせて使うことが大切です。

6. まとめ

書籍小説として整えるなら:

  • 地の文は一字下げ
  • 会話文は一字下げしない
  • 会話文末に句点を入れない
  • 三点リーダーとダッシュは偶数個
  • 表記ゆれをなくす
  • 視点と時制を安定させる
  • 空行は控えめ

WEB掲載で読みやすくするなら:

  • 空行をやや多めにする
  • 段落を短めにする
  • 会話文の前後に余白を入れる
  • 漢字を少し開く
  • 一文をやや短めにする
  • 場面転換を空行で分かりやすくする

小説の基本作法は守りつつ、WEBでは余白・段落量・漢字の開き方だけを調整する。

このバランスが、書籍小説としての整いとWEB上での読みやすさを両立させるうえで、もっとも自然な方針です。

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